サウナが健康によい、といわれる理由―その秘密は、全身から流れ出る汗にあります。また、サウナ浴の時には、血行や呼吸など、他の身体機能も亢進し、それが汗の作用にプラスされて、さまざまな効用をもたらします。
汗には大きく分けて、二つの働きがあります。
一つは体内の老廃物を分泌して、身体や皮膚を清潔にする働きで、尿と同じように過剰な塩分や有害な重金属を体外に排出します。
もう一つは体温を調節する機能です。発汗によって体温の上昇を抑え、身体全体のクーラーのような役目を果たします。
1回のサウナ浴で出る汗の量は約300~400ミリリットルですから、汗のもたらす健康・美容効果が十分に得られます。
高温のサウナに入ると、血流が増し脈が速くなる、血圧が上がるなど、身体の各器官に機能亢進が起こります。その結果新陳代謝が活発になり、乳酸などの疲労物質は汗と共に体外に排出されます。
こうした身体変化は高温のサウナほど著しく、低温のサウナでは比較的少なくなります。
サウナに入った直後、脈拍数は急激に上昇します。初期上昇といって、交感神経の緊張によるものです。ついで数分後に、ゆるやかな二次上昇がみられます。これはサウナで身体が暖まって血行がよくなり、心臓から送り出される血液量が増加するからです。ちょうどジョギングなどをしたときと同じ状態になるわけです。
サウナから出ると脈拍数は減り、20~30分で平常に戻ります。
血圧はサウナに入るといったん上昇しますが、浴後は降下し、その後入浴前より低い状態が続きます。 一般に80~90℃のサウナに長時間入った後は、約10~15mmHg(ミリメートル水銀柱)の低下が2~3時間続くのに対し、100℃では浴後10~20分血圧が上昇したままの場合もあります。
血圧の昇降にはサウナの温度が大きく関連するので、入り方や温度を調節すれば、上手に血圧を下げることができます。実際に高血圧の人が家庭で低温サウナに毎日入浴して、降圧効果をあげている例もあります。
サウナの中で上昇した体温は、汗だけで冷却し、体温調節をしているのではありません。アメリカ、ペンシルベニア大学のJ.ハーディ教授によると、体内には四つの体温計があって、二つは熱測定用、二つは寒さ測定用です。
この一対は皮膚の中にうずまいていて、皮膚の僅かな温度変化でも敏感にとらえ、あとの一対は脳の中にあって、体温があがり、血液温度が上昇すると反応します。
サウナに入ると、身体の中のこの四つの体温計が温度を読みとって脳の中枢に伝えます。そして脳の中枢は、血液の濃度、心臓のポンプ作用や血液循環の速度、血圧や呼吸などの働きの調整をします。
このような身体の中の恒温装置(サーモスタット)によって、サウナ室温に対応した体温冷却の働きが行われています。
日ごろ私たちの身体は、夏は冷房、冬は暖房と甘やかされています。自然の温度変化に遭遇しないため、この四つの温度計は使われず、サーモスタットの働きがにぶくなり、季節の変わりめには風邪をひいたり、夏バテ、夏痩せ、熱中症など温度変化に弱くなってきています。だからいまこそサウナ健康法の時代なのです。
長い歴史の中で、鉄器時代に入るとサウナも丸太小屋造りとなる。サウナ室の中に多くの石を積んで炉を作り、炉の中で薪を燃やして石が加熱するまで数時間熱する。薪が燃え尽きたときはサウナ室の中は煙が充満しているが、最初のロウリュで煙は外へ排出される。ベンチの灰を掃除して入浴準備完了となる。
現在のサウナの基本型なので「ベーシックサウナ」とも呼ばれ、フィンランド人にとってはこれこそサウナとの思いがある。
造りも構造もスモークサウナとそっくりである。違いは、石積みの炉の上に湯沸かしの釜がのっている。石に水を掛けることもするが、この釜から絶えず蒸気をたてスティームバス的に使う。釜の湯は身体を洗うためにも使い、湯が減ればバケツで補充する。このような伝統的なバーニァは田舎で見ることができる。
現在は電気式ストーブに代わっているが、ロシアでは温度も湿度も極めて高く日本人には耐えがたいという。耳をやけどから守るためフェルトでできた耳まで覆う帽子をかぶって入るのが風習。
アステカ帝国時代の熱気浴で、当時は床下から加熱するか、隣りの部屋で火をたき壁からの熱で熱していた。現在観光リゾート地等にあるのは石造りの釜風呂の形で、隣の炉で石を焼いて熱した石を運び込んで使用する。
古代ローマ風呂は様々な施設から構成されていた。温浴施設の中で熱気浴に相当するのはテビダリウム(微湿浴室)とラコニクム(発汗室)で、床暖房方式により加熱していた。デビダリウムで身体を温度に慣らし、カリダリウム(熱浴室)で熱い湯につかってラコニクムに移りたっぷりと汗をかいてフリギダリウム(冷浴室)かナタトリウム(冷水プール)で身体を冷やし気分をリフレッシュさせる「循環入浴」を楽しんでいた。
オスマントルコが東ローマ帝国を滅ぼしてイスラム文化が世界に拡大したとき、ローマ風呂を独自の浴場に変えたもの。ハマムという言葉は本来公衆浴場のことである。浴場の中央には一段高くなったギヨベク・タシュと呼ばれる石の台が作られて下から加熱されており、この上に横たわり発汗する。
1993年にできたカサブランカにあるハッサン2世モスクは20世紀最高の芸術作品の一つといわれている。モスクの地下には大勢の巡礼者のための広いハマムがあるが、ここでは部屋の各所に蒸気の吹き出し口が付いている。大人数を同時に入浴させるためのものである。昔ながらのハマム(ターキッシュバス)は蒸気は使用していない。
石を積み上げた「幕」というドーム型の室内で、松の木を燃やして十分に室内を熱してから煙や灰を掻き出して、床に濡れたムシロを敷いて水蒸気を沸き立たせて入る熱気浴。15世紀朝鮮王朝時代には朝鮮半島の各地にあった。現在は汗蒸幕として再現されている。
古代日本の瀬戸内沿岸などで多く見られた。自然の洞窟を利用した熱気浴。適当な大きさの洞窟の中で薪を燃やして充分に洞窟内が熱してから床に海水で濡らしたムシロを敷いて入浴する。
歴史的には京都八瀨の釜風呂が有名。石風呂が自然の洞窟を利用したのに対し、これは人工のドーム型の部屋。使い方は石風呂と同じであるが、床に敷いたムシロにまく水は塩水である。