髪の毛も通さないような細い汗腺(エクリン腺)から浸み出る水滴・・・・これが汗です。
この水滴は全身の皮膚に散在する約200万から400万個の汗腺から分泌します。しかもこの汗は冷房や暖房によって弱体化した現代人、体温調節能力を失った半健康人の健康と美容にとって、極めて大事なものです。
汗をかく機会の少ない現代社会の生活のなかで、サウナによる発汗は、すばらしい働きをしてくれます。家族みんなの健康管理のために、また健康な生活設計の上からも、ぜひサウナをおすすめします。
サウナは、朝入れば今日一日のウォーミング・アップに、夜入浴すれば安眠のために、ある時はストレス解消に、肥満減量に、疲労回復に、血圧を下げるためにと、その目的によって入浴の条件は異なりますが、入浴法を工夫すれば、家族みんなが健康改善に活用できるのです。また、日頃からサウナで汗を出す習慣をつけ、休んだ汗腺を活性化することで夏場の熱中症予防にもつながるのです。
今からおよそ2000年ものむかし、白夜の国フィンランドのフィン族が、太陽の恩恵の少ない北欧の風土の中で、厳しい寒さと労働の疲れをいやすために生活の知恵として生み出した「自然健康法」がサウナです。サウナに似たものは世界の各地にありました。
今日、サウナは、北欧をはじめ、ヨーロッパやロシアなどに受け継がれて、わが国には1963年頃から紹介され、今やサウナ愛好家は1000万人を越すほど、広く利用されています。
人類は文明の進歩に反比例して、自分の身体を最小限にしか使わないために、筋肉は弱体化し、身体は固く、体力は年々低下、基礎体温も低下の傾向にあります。そのうえ、夏は冷房、冬は暖房と、自然環境の温度変化から身体を甘やかした結果、抵抗力も低下してしまっているのが現代人の特徴です。
また美食や食事の不摂生によって健康をそこねた、いわば半健康の人びとが多くなっています。このような半健康人にとって、サウナは発汗だけでなく交感神経や副交感神経にも大きく作用し,精神の安定にも大きな効果を与えます。 健康維持のために、眠れない人は安眠のために、あるいは美容のためにと、サウナならではの効果が期待できるのですから個人個人の健康状態や、その利用目的に合わせて効果的にサウナに入るという、サウナ入浴法が考えられます。
サウナとはフィンランドに伝わる熱気浴のことをいいます。
石を熱して,その焼け石で部屋を熱する熱気浴を石発汗浴ともいいますが、2,000年前にはヨーロッパの各地にあったといわれています。サウナは2,000年の歴史といわれますが,考古学的には石器時代に遡るともいわれます。
熱気浴は非常に激しい肉体労働、たとえば土地を耕すためにはまず樹木を切り倒して土地を整備することから始めなければならなかったような、厳しい条件をもつ国々で用いられるようになりました。
激しい労働のあとは手足を柔軟にしておき、再び次の仕事を始める前に体力を回復しておく必要があったのです。
重労働がサウナの必要性を生み出し、森林が燃料を供給するという、二つの条件がフィンランドのサウナを発達させたと考えられます。
フィンランドのサウナ浴ははだかになって熱く乾燥した部屋に入り、座ったり、横になったりして汗が出るのを待ちます。そして汗が出始めたところで、浴室の中にある焼けた石に、桶に用意した水をヒシャクで掛けロウリュを楽しんだり、白樺の小枝を束ねたもの(ヴィヒタ)でふりかけます。ジュッという音とともに水は一瞬にして蒸気となってサウナ室内の天井を這うように乾燥したサウナ室に広がって約10~15%だった湿度が急激に増して、皮膚を刺激します。このヒリヒリする熱さ、つまり蒸気刺激が健康のために好ましい皮膚刺激となって、ロウリュを楽しみ、また発汗を著しく促進してくれるのです。
よく汗が出てきたら、ヴィヒタで身体の各部分をたたいて、十分皮膚を刺激します。汗が出切ったところでサウナを出て身体を洗います。
フィンランドのサウナ小屋の多くは湖のほとりに建てられていますから、サウナを出ると近くの湖に飛び込んだり、雪の中をころげまわります。 今日の日本のサウナなら、さしずめ冷水シャワーか、水風呂に入ることになります。これを3~4回くり返して終了します。 一般に健康な人のサウナ浴の適温は摂氏80~90℃といわれています。
フィンランドはサウナの国。510万人の人口に対して160万個のサウナがあります。約3人に1個の割合です。少なくとも400万人のフィンランド人が週に一度はサウナに入り、多くの人がこれより頻繁にサウナに入るといわれています。
サウナはたんに身体を清潔にするためだけのものではなく、精神的なくつろぎと娯楽の場所にもなっているのです。
またフィンランドの人びとは、客を食事に招くと同時にサウナへも招待します。サウナによって健康を保ち、病気の時はサウナで療養します。
今でも老人の中には赤ちゃんの出産がサウナ室で行われたことを知っています。それはサウナの中が一晩中暖かく、しかも一種の無菌室になっているからでしょう。
フィンランドでは、新しい家を建てるときにはまず、サウナを中心に設計するといわれるのも、このような背景があるからでしょう。
フィンランドの人びとは、サウナの伝統を守り、サウナ文化と現代の生活様式と習慣に順応させてきたといえます。