アメリカのジュ・ボア博士が、汗腺を持たずに生まれてきた少年を研究しましたが、「気温が約30℃を越えると必ず発熱してしまう。それでシャツの上から水をかけてやると、熱はすぐ下がって元気を取り戻す」という報告がなされました。
私たちは外気温が上がったり運動したりして体温が上がると汗を出して体温を下げる、汗腺という冷却装置を身につけています。
この汗腺は粟粒の10分の1という小さな穴です。この穴は、サウナの生まれた北欧人は全身に200万個くらい、熱帯地方の人々は400万個くらい、そして日本人には300万個くらいあります。現代人の汗腺は夏でもその約半数しか働いていませんが、サウナに入ると総動員して汗を出して体温の放熱をはかるわけですから、入り方に工夫をすれば、熱中症の予防などさまざまな活用法があります。
サウナは90℃という熱気浴です。しかも湿度は10~15%と低いので、入り方によっては健康に良くもあり、時には悪いことにもなりかねません。
しかし、血液循環をよくし、全身の組織に酸素、栄養、ビタミン、ホルモンを供給し、疲労物質を排泄し、皮脂腺や汗腺を清潔にして神経の調節作用まで高めるという、サウナならではの効果が期待できます。
従って、肥満の人の減量、高血圧の人の降圧、不眠の人の安眠法に、疲れた人の疲労回復、女性の全身美容など、自分の健康状態に合った入り方を覚えて、より効果的なサウナを楽しみましょう。
仕事の疲れをとるため、美容のため、健康づくりのためなど、サウナに入浴する目的は、人によってさまざまです。
図4の円グラフは、1,000万人を超すというサウナ愛好者の、目的別の割合を表したものです。
男性では疲労回復が、女性では減量・美容がその1位ですが、こうしたサウナ効果は、主として入り方と温度に左右されます。
サウナ入浴法は目的や体力によって異なります。
15分以上入浴を続ける持続浴、途中でサウナを出て何度かくり返し入浴する反復浴、サウナ浴と冷水浴を交互に行う交代浴など、入浴法にはいくつかの種類があります。
くわしくは後の方で述べますが、たとえばやせるための落汗減量には、十分に汗を出しきる反復浴が効果的です。また、体力に自信のない人や、心臓の弱い人などには、低温で入って少しずつ温度を上げていく、漸増浴という入り方をおすすめします。
いずれにしろ、各人がサウナ浴の目的や自分の体力をはっきり自覚し、無理のない入り方をすることが大切で、サウナのすばらしい効果は、そうした時にはじめて本当にあがるといえるでしょう。
サウナの目的別入浴法には、次のようなものがあげられます。
スポーツの疲れ、トレーニング及び肉体疲労の回復には、熱めのサウナに入るのがいいでしょう。疲労部位と非疲労部位の差がなくなって疲労感がとれ、やがて疲労物質(乳酸)が排泄されて、疲労回復が促進されます。
皮下脂肪は熱を伝えにくいので、肥った人はなかなか汗が出にくいものです。しかしいったん汗が出始めると続いてよく出ます。皮膚から1ミリリットルの汗が気化するときには、0.58カロリーの熱量を奪いますし、よく汗を出せばその分体重も減ります。
しかしそれは一時的なことで、日常の適度な運動とほどよい食事の取り方が大事です。
高温のサウナに入ると、皮膚血管はまず収縮します。それから体温の上昇に伴って拡がります。
血管調節の働きをよくして、皮膚の生理機能を活発にすることが美肌づくりのコツで、低温のサウナにゆっくり時間をかけて入ることです。日ごろ機能しない毛穴が開いて、汗腺も活動して汚れや脂肪を排出します。フィンランドのことわざの一つに「女性が一番美しいのはサウナから出たあとの1時間」というのがあります。
職場や仕事で張りつめた糸も、時にはゆるめないと、やがて断ち切られてしまうでしょう。汗を十分かいた後の爽快感はなんともいえません。サウナ浴は、全身の代謝亢進、心とからだの平衡、汗が蒸発するときの爽快感などによるいわば間脳刺激のマッサージになります。
低血圧の人はサウナ浴のみで調子のよさを感じますが、サウナと冷水の交代浴で、血圧を正常に戻します。 高血圧症の人のサウナ入浴には注意が必要です。入浴直後の血圧の初期上昇を防いだり、高温持続浴で心臓に負担をかけ過ぎないようにすることです。
しかし、サウナ入浴は血管を拡げ、血圧を正常値に近づけることが知られています。
眠れない人は、低い温度のサウナにゆっくり入り、汗のひくのを待って、すぐ就寝するのがコツです。